懐かしい風景を塗り絵で お年寄りも生き生き

 

  • 写真・図版お年寄りが昔懐かしい風物の塗り絵に取り組むことで、認知症の予防に役立てる「おとなの塗り絵」が兵庫県姫路市内の出版社から刊行された。子どものころから親しむ姫路城や播磨地域の祭り、名所などの絵に自由に色を塗り、同時に風物に関する思い出を書き記す。認知症予防の専門家は「目と手を使い、記憶を呼び戻すことで脳の活性化につながる」と評価していいる。「金木犀(きんもくせい)舎」(代表・浦谷さおりさん)が昨年出版した「播磨 おとなの塗り絵&思い出筆記」(A4変型判、24ページ)。イラストレーターでもある浦谷さんが描いた「書写山円教寺とロープウェイ」「赤穂御崎・伊和都比売(いわつひめ)神社の鳥居」「五百羅漢」などのイラスト5点と、切り絵画家の八田員徳さんが制作した姫路城や「相生ペーロン祭」など6点の計11点の塗り絵をおさめている。お年寄りらは色鉛筆などで自由に彩色できる。

 別ページには、風物に関する質問をのせ、答えを書いてもらう。姫路城では、「城へお花見に行ったことはありますか」「どんなものを食べましたか」など、子どものころの出来事を思い起こせる構成にした。

認知症の予防に役立つとされる「回想療法」の専門家たちでつくる「日本回想療法学会」の小林幹児会長は、この本について「絵を描くことは、集中力と手の運動が連動し、大脳の活性化につながる。さらに思い出を記せば、日常生活の仕方を覚えた10~15歳のころの記憶が呼び起こされ、認知症の予防につながる」と話している。

浦谷さんは、お年寄り向けの出版を思い立ち、各地の介護施設を回った。認知症が進むにつれ、文字を読むのがおっくうになる場合が多いと聞き、「昔を思い出す塗り絵なら、気軽に取り組め、予防に役立つのでは」と構想を練った。

浦谷さんによると、購読者の中には認知症が大きく改善した80代の男性もいる。この男性は介護を受ける通所施設で、時折暴れるなどの行動があった。しかし、塗り絵を気に入って何度も繰り返すうち、問題行動が減り、読書を再開したという。浦谷さんは「塗り絵の効果かどうかは分からないが、改善してもらえてよかった」と話している。

姫路、加古川、明石の各市などの書店のほか、ネットでも購入できる。540円(税込み)。問い合わせは金木犀舎(079・280・5916)。
(朝日新聞デジタル)