介護サービスの価格の基準となる介護報酬を2015年度から2.27%下げることを正式に決まった。9年ぶりのマイナス改定だが、03年度の2.3%下げを上回る過去最大の下げには踏み込まなかった。
一方、介護報酬の上乗せ要因となる賃上げには、1.65%分、千数百億円を回す。介護を担う人材の不足を解消するために、全産業平均に比べ10万円低い職員の賃金を上げる。勤続年数などによって、個々人の賃上げ幅は異なるが、介護職員の賃金は平均1万2千円上がる。
さらに、介護の必要度が高い人や認知症の人への手厚いケアを行う施設を増やすために、介護報酬0.56%分を手当てする。事業者が職員の賃上げや、新規雇用を拡大する財源を確保するとしている。
一方、サービスの単価は平均で4.48%下げる。個別の具体的な下げ幅は厚労省が2月中に決める。特別養護老人ホーム(特養)やデイサービス(通所介護)は、利益率1割前後ともうけが大きいため、大幅に下げる。事業者の経営状況をみてサービスに響かないようきめ細かく設定する。
賃上げなどのための上乗せ分と単価減額分を差し引くと、全体で介護報酬は2.27%減る。この結果、保険料負担、利用者負担、国・地方の財政負担が全体で2千億円超抑制できるという。
介護需要の拡大に対応して、65歳以上が払う介護保険料は、今のままなら約15%上がり、全国平均で5800円になるはずだった。今回の改定で約10%増の5550円にとどまる。40~64歳が払う保険料も上がるが、伸び幅は抑えられる。
00年度に始まった介護保険制度は、介護を使う高齢者の自己負担割合を1割と低く抑え、介護の必要が小さい人の食事サービスなどにも「予防」を名目にお金を出してきた。半面、認知症などで日常全般に手厚い介護が要る人は増え、それを担う人手は不足している。
制度の持続性を高めるには、限られた財源を、本当に必要な介護に回す必要がある。人手不足も、今回の賃上げだけでは解消できない。事業者自身の経営努力が欠かせない段階に入っている。