小規模のデイサービスでは、認知症をお持ちのご利用者様への対応に、苦慮されている方も多いのではないでしょうか。特にBPSDが引き起こす。様々な症状への対応は、その手段を見つけ出すことが、本当に困難である場合も多く、認知症の各疾患から引き起こされる、様々な症状について適切な対応が行えるように、スタッフの専門性や、疾患に対する正しい理解、また、人権に対する適切な対応が行えるような教育やスキルの向上コンプライアンスへの理解を進める必要があります。
認知症はせまい意味としては「知能が後天的に低下した状態」の事となりますが、医学的にはこの「知能」の他に「記憶」「見当識」を含む認知機能の障害や「人格変化」などを伴った様々な症状として定義されています。もともとこの認知症という言葉は、非可逆的疾患(治療してもよくならない・改善しない)にのみ使用されていましたが、最近は、正常圧水頭症など治療を行うことによりにより、よくなる可能性がある疾患に対しても認知症の用語を用いることもあります。また、単に老化によって物覚えが悪くなるといった誰にでも起きる現象は含まず、病的に能力が低下するもののみをさします。
また統合失調症などによる判断力の低下は、認知症には含まれず。頭部の外傷により知能が低下した場合などは高次機能障害と呼びます。
その主な原因は、脳血管障害、アルツハイマー病などの脳の変性による疾患、正常圧水頭症、ビタミンなどの代謝・栄養障害、甲状腺機能低下などがあります。これらの原因により生活に支障をきたすような認知機能障害が表出してきた場合に認知症と診断されます。
脳血管障害の場合、画像診断で小さな病変が見つかっているような場合でも、これが認知症状の原因になっているかどうかの判別は難しいとされており、また脳血管性認知症と診断されてきたが、実際はアルツハイマー病が認知症の原因となっている、「脳血管障害を伴うアルツハイマー型認知症」である場合も多くなっていります。
さて、その原因疾患ですが、一つではなく多岐にわたります。こういった様々な原因により引き起こされる認知症はその、脳の機能が相対的に低下していく中で、いくつかの症状が複合的に出現しすることにより、個別的ではありますが、しだいに急激に、その生活の質に様々な障害を抱えることとなります。
この脳の機能低下から起こる記憶障害や失見当識など、脳の機能の低下を直接反映するような症状のことを認知症の中核核症状といいます。(記憶障害・判断力低下・見当識障害・言語障害・失行・失認など)、認知症でほぼ常に出現する症候群であるといえ病気の進行とともに徐々に進行します。
これに対し、全ての症状が出現するというわけではないですが、脳を中心とした神経機能が、その残された能力で、外の世界への反応としてして表れてくるのが周辺症状(BPSD)といわれています。認知症の中核症状は全ての認知症の方に普遍的に表れるのに対し、周辺症状は、個別差があり、認知症患者によって出たり出なかったり、また、表れる症状の種類に差が生じる場合が多くなります。
主な症状としては幻覚、妄想、徘徊、異常な食行動(異食)、意欲低下、抑うつ、不安・焦燥、暴言・暴力(噛み付く)、性的羞恥心の低下(異性に対する卑猥な発言の頻出などなどがあげられます
発生の原因としては中核症状の進行にともなって、低下する記憶力・見当識・判断力の中で、不安な状況の改善を懸命にはかろうとし、他者からは異常と思える行動になることがあり、そのことが社会生活の中で軋轢を生み、そのことでさらに不安な状態が進行し、更に症状のエスカレートが発生することが挙げられます。
中核症状と違い一定の割合ので見られ、必ずしも全ての認知症をお持ちの方に同じ症状が見られるとは限りません。また、その症状は上記のもの以外にも多岐にわたり、多数の周辺症状が同時に見られることも珍しくありません。
また、中核症状が認知症の初期・軽度・中等度・重度と段階を踏んで進行していくのに対し、周辺症状は初期と中等度では、症状が急変し、より激しい症状が現れ、日常生活を行う能力が急速に失われる事も多く。そのことが、家族などの介護をより困難なものにしています。
激しすぎる周辺症状が発生した場合には非常に困難な対応となります。特に施設などで、暴言や、暴力行為などがある場合は、あるいは、認知症に起因するセクハラ行為などがある場合も、全ての施設ではないですが、受け入れを拒否する介護施設があることも事実です。
認知症から引き起こされる不安な気持ちを緩和するような方法で、改善する場合もありますが、中核症状の状態や周辺症状の種類などによっては、ケアの方法論だけで症状を緩和することが困難で、ケースによっては向精神薬等を用いて行動を安定させた上で、ご利用継続するよう対応をお願いせざる負えないばあいもあります。一方、初期の状態での適切なケアが行われ、状況に応じ、医療を含む関係者と連携し適切な選択をすることで、終末期までご自宅でお過ごしできると私たちは考えています。
またあしたでのような定員が10名から12名程度のご小規模の施設では、認知症について正しい理解をし適切な対応を行うことが特に重要です。スタッフの不十分な対応から、強い行動障害が出た場合など、狭いで煮空間の中では、逃げ場がなく、他のご利用者様までも、不穏な空気が伝わってしまい、サービスのコーデネイト自体が困難になります。
一方、スタッフの対応、ケアのみでは残念ながらどうにもならない場合もあります。そういったばあいでも、正しく疾患を理解し、そのかたの詳細なデータを把握することで、取りえる最善の選択は行うことが出来るようになります。どんなに、激しい行動障害があったとしても、それは意図したものではなく、今日できたことが明日出来なくなる。底なしの不安に落とし込まれている、認知症をお持ちの利用者様の苦しみを理解し、出来るお手伝いを介護の専門職としてさせていただく、そのことの繰り返しだと私たちは考えています。
また、私たちは、正しい理解をすることで、ケアの力だけではどうすることもできないことがある。ということも知ることが可能となります。自分たちの限界を知り、必要があれば最善のタイミングで、様々な機関との連携を行い、その上で出来ることすべきことをする。そうすることで、もっとできたのに、という、介護職のスタッフが多くもつ自責の念というようなものも、軽減でき、少しは介護離職を防げるのでは そんな風に考えてます。