家族の責任、最高裁が初判断へ 認知症患者の電車事故

愛知県で2007年、徘徊(はいかい)中に電車にはねられ死亡した認知症患者の男性(当時91)の家族にJR東海が損害賠償を求めた訴訟の上告審で、最高裁第3小法廷(岡部喜代子裁判長)は10日、当事者双方の意見を聞く弁論を来年2月2日に開くと決めた。認知症患者の家族の監督責任について、最高裁が年度内にも初めての判断を示すとみられる。

上告審では(1)家族に監督責任があるか(2)監督責任がある場合に責任が免除されるケースに当たるか――が争点。一、二審判決は家族の監督責任を認めて賠償を命じた。認知症患者の急増が見込まれる中、判決は介護現場に大きな影響を与える可能性がある。

一、二審判決によると、男性は07年12月7日、自宅で介護していた妻と長男の妻が目を離した間に外出し、愛知県大府市のJR共和駅構内の線路に入って電車にはねられ死亡した。男性は認知症で常に介護が必要な状態と診断されており、JR東海は家族が監督義務に違反していたとして、振り替え輸送などの費用約720万円を連帯して支払うよう求めた。

一審・名古屋地裁は妻の監督責任は認めなかったが「見守りを怠った過失がある」と認定。別居中の長男は「事実上の監督者に当たる」として、妻と長男に約720万円の支払いを命じた。

二審・名古屋高裁は妻について監督責任を認めたが、JR東海側も安全配慮義務があったとして賠償額を約360万円に減額。長男については「監督者に該当しない」として賠償責任を認めなかった。判決を不服としてJR東海側と妻側の双方が上告していた。(日本経済新聞)