家族の事

私には、2人の兄がいる。
親父が、私が、ようやく一人でよちよち歩けるようになったころに急逝した後、
長男は、おやじの代わりを務めようと思ったのか、母を助け、厳しく弟たちに接するようになった。
ほんの少し前まで、兄の前に出ると身がすくんで、恐ろしくて、言いたいことの半分ぐらいでとどめておくというのが、自分の中での一つのルールになっていた。

長兄のことを言葉で表現すると『怖くて、厳しい、だけど、情に厚い』
生きていく中で、何度も立ち止まり、必死で道を捜している時、何度も兄が救ってくれた。言葉であったり、態度であったり、時には資金や自分の時間を援助してもらったことも・・・・・

その兄が、脳内出血で急に倒れ、障害が残る体に
誰もが考えもしなかったこと・・・・

言葉ではなく、いつも目をみれば、分かる人だった。
その兄の目に力がない様子を見て、兄の傷ついた心の深さが、胸に迫ってくる。

私に、何が出来るのだろう・・・・何を返すことが出来るのだろう
そう考え、横たわる兄の背中を摩るのが、私に出来る、精いっぱいの事だった。