アシックス、通所介護100カ所展開 独自の運動プログラム

軽度の要介護者が自宅から通ってリハビリなどを行うデイサービス(通所介護)に様々な業種が参入している。アシックスは2020年をめどに首都圏、関西の100カ所程度を展開する。住宅街などに施設を出し、独自の運動プログラムで特色を打ち出す。初期投資の小さいデイサービスには建設業などが進出したが、パナソニックやイオンなど知名度と資本力を持つ異業種の大手企業も参入している。今後は淘汰が進み、施設の質向上にもつながりそうだ。

デイサービスの市場は高齢者人口の増加とともに拡大している。厚生労働省によるとデイサービスの利用者は14年度で250万人強と5年で4割増えた。必要な施設面積が小さく、少人数で運営できるため、近年は地方の中小企業などの進出も相次いだ。

アシックスは運動能力の測定技術などを生かして本格参入する。デイサービス拠点「トライアス」を兵庫県で5カ所運営し、ノウハウを蓄積した。16年から首都圏でも展開する。

食事や入浴サービスは提供せず、利用者はグループで平均3時間ほど体を動かす。身体測定のデータを基に一人ひとりにあった運動プログラムを提供する。運動機器にはタブレットを付けて、使用履歴や目標への到達度を利用者に示す。

介護保険の適用により介護度が軽い「要支援1」の場合、利用者は2割の自己負担で月4千円程度を払う。1施設で1日40人程度、年4千万~5千万円程度の売上高を見込む。施設運営で得たデータなどはスポーツ用品の開発にも生かす。20年度に介護関連で40億円前後の売上高を見込む。

デイサービス市場にはパナソニック、東京急行電鉄、セントラルスポーツなど資本力と消費者の認知度を備えた異業種大手の参入が続いた。専業最大手のツクイも大規模施設で最新のトレーニング機器などを特徴に打ち出し、施設間の集客競争は激しくなっている。

厚労省は介護報酬の急増を抑える方針で、15年4月にデイサービス事業者の売り上げとなる介護報酬を他の介護サービスより大きく減らした。

一部のデイサービスはマージャンなどで時間をつぶす「娯楽施設」になっているとの指摘もある。施設の料金体系は介護報酬制度でほぼ横並びになるだけに、今後はサービス水準によって消費者の選別が進み、特色のない中小施設の事業環境は厳しさを増しそうだ。(日本経済新聞)